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10月, 2025の投稿を表示しています

イマドキシニアの日常生活#11 キキドクって何?

年を重ねるにつれて何が困るって、老眼で文字が読みにくくなること。 自然、読書から距離を置くようになってしまう。 読みたい本があって買ってもツンドクになりがち。 電子書籍を文字を大きくしてタブレットで読むというのも今一つなじめない。 ところが、先日、最近は「キキドク(聞き読)」という方法で読書をしている人が増えているとの情報を得た。 サブスクで一カ月 1000 円~ 3000 円で 1 万点以上の本を聞き放題なのだそう。 ナレーションも俳優や声優が録音していて、好きな声を選べるようだ。 自分が聞きやすい声で耳から情報を得ることで、その本の世界感にスッと入り込むことができるのだという。   幼いころ、祖母が夜、添い寝をしてくれたときには必ずソラで物語を語ってくれた。目を閉じると、さまざまな情景が祖母の声によって広がり、主人公とともに冒険の旅に出た。物語を読みたいと思うようになったのは、祖母の語りがきっかけだったかもしれない。   ある女性は定年退職後、家事をしながら本を聞くことが習慣になり、それまでほとんど読書をしていなかったが、 1 カ月で 8 冊読むようになった。慣れてくると 1.5 倍速で聞けるようになったと言っていた。さらに、読んだ本のリストをアプリに登録して簡単な感想を書いたりすることで、友人の輪が広がり、お奨めの本を教え合ったりしているそうだ。   確かに、ハードカバーの本を 1 冊買うと 2000 円くらいするので、コストパフォーマンスはよさそうだ。家も本の山に埋もれずに済む。いいことづくめではないか。   とはいえ、大事な本は宝物。手に取って、一字一字読み進め、ページをめくる作業が楽しい。表紙の装丁や使われている書体までもがいとおしい。どんな漢字を使っているかによっても物語の印象が違ってくる気がするのだ。そして、ちょっと立ち止まって考え込んだり、少し戻ったりしながら読むのも紙ならではの醍醐味。 本棚に著者ごとに 1 冊ずつ本が並べられていく嬉しさも捨てがたい。   いろいろなものが電子化され、紙文化がなくなりつつある。美容院の雑誌はタブレットで選択して読むようになったし、レストランのメニューもタブレットから注文するようになった。コンサー...

推し活とプロダクティブ#16 「その人なり」とプロダクティブ

老年学、豊かな歳の重ね方の研究をしていることもあり、たくさんの大先輩たちの人生を垣間見る機会をいただいている。 その生き様は多様で、自分が学んできた老年学の理論だけでは捉えきれない人ばかり。   体操サークルで出会った歩行困難な一人暮らしの女性は、 90 を超えてもたくさんの人々に頼られ、プロダクティブエイジングのお手本の様な生き様。 一方で、公園のベンチで出会った 60 代の男性は、大企業の管理職を定年退職してからは家に閉じこもり、毎日が長いとため息ばかりついていたり。   研究をはじめた最初の頃を思い返すと、先に例として触れた 90 を超えた女性のようにキラキラ輝く人に目が行きがちだったのだけれど。 たくさんの人にお会いする程に気になりはじめたのが、「その人なり」という視点。   例えば、先に例に出した 60 代の男性の「その人なり」を考えてみると … かってに、閉じこもって、過去を振り返ってばかりと決めつけていたけれど、本当にそうなのかな … 。   よーく目を凝らすと、 1 日に 8000 歩と決めた目標を達成するために、朝夕に雨の日も近所をウォーキングしていたり。 ついでにマイトングとゴミ袋を片手にゴミ拾いをしていたり。   週に 2 回、奥さんに隠れ、医者に控える様に言われている甘いものを買いにミニスーパーに通っていたり。 その際には、誰に頼まれたわけではないけれど、小学校の下校時刻にあわせ、横断歩道でかってに見守りをしていたり。   この男性の面白いのは、環境活動や見守りなど、地域のためになる活動をしているのに、それを誰かから認められたくないこと。 ついつい褒めてしまった私にこの男性が返したのは「そんなこと言われるとやんなっちゃう、自分の健康のため、とか、気になるから、これじゃあダメなの?」という怒りの言葉。   もしかしたらだけれど、 1 日が長い … と過去の仕事山積みな毎日を振り返ることを楽しんでいたのかもしれない。 もしかしたら、自分だけがわかる小さな誰かのためのゴミ拾いや見守りが、この男性の今なりのプロダクティブなのかもしれない。   人からの評価の中で生きてきた 30 ...