老年学、豊かな歳の重ね方の研究をしていることもあり、たくさんの大先輩たちの人生を垣間見る機会をいただいている。 その生き様は多様で、自分が学んできた老年学の理論だけでは捉えきれない人ばかり。 体操サークルで出会った歩行困難な一人暮らしの女性は、 90 を超えてもたくさんの人々に頼られ、プロダクティブエイジングのお手本の様な生き様。 一方で、公園のベンチで出会った 60 代の男性は、大企業の管理職を定年退職してからは家に閉じこもり、毎日が長いとため息ばかりついていたり。 研究をはじめた最初の頃を思い返すと、先に例として触れた 90 を超えた女性のようにキラキラ輝く人に目が行きがちだったのだけれど。 たくさんの人にお会いする程に気になりはじめたのが、「その人なり」という視点。 例えば、先に例に出した 60 代の男性の「その人なり」を考えてみると … かってに、閉じこもって、過去を振り返ってばかりと決めつけていたけれど、本当にそうなのかな … 。 よーく目を凝らすと、 1 日に 8000 歩と決めた目標を達成するために、朝夕に雨の日も近所をウォーキングしていたり。 ついでにマイトングとゴミ袋を片手にゴミ拾いをしていたり。 週に 2 回、奥さんに隠れ、医者に控える様に言われている甘いものを買いにミニスーパーに通っていたり。 その際には、誰に頼まれたわけではないけれど、小学校の下校時刻にあわせ、横断歩道でかってに見守りをしていたり。 この男性の面白いのは、環境活動や見守りなど、地域のためになる活動をしているのに、それを誰かから認められたくないこと。 ついつい褒めてしまった私にこの男性が返したのは「そんなこと言われるとやんなっちゃう、自分の健康のため、とか、気になるから、これじゃあダメなの?」という怒りの言葉。 もしかしたらだけれど、 1 日が長い … と過去の仕事山積みな毎日を振り返ることを楽しんでいたのかもしれない。 もしかしたら、自分だけがわかる小さな誰かのためのゴミ拾いや見守りが、この男性の今なりのプロダクティブなのかもしれない。 人からの評価の中で生きてきた 30 ...
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国際長寿センターは1990年の設立以来、エイジズムに反対し、豊かで創造的な社会を目指す国際長寿センター・アライアンスの「プロダクティブ・エイジング」の考え方に沿って活動してきました。 私たちはかねてから日本の長寿社会に関する情報について調査研究やイベント結果の発信を報告書やHPで発信してきましたが、より機動的にまた読みやすい形で発信するためにブログの形式も利用することとしました。 内容は、現在の日本の高齢者と高齢社会のすばらしい事柄から、課題や方向性など含めながらコンパクトな記事を用意していきます。 ご愛読をお願いします。