スキップしてメイン コンテンツに移動

日本の高齢者と高齢社会#1      超高齢社会日本と高齢者の健康、就労

超高齢社会日本と高齢者の健康、就労


  日本の65歳以上の人口全体に占める割合(高齢化率)が非常に高いことは周知のことですが、まず高齢化に関連する最近の総論的であると思われる数字を確認しておきます。比較対象国は、社会保障制度やGDPが日本と比較的近いヨーロッパのドイツ、フランス、イギリスと介護保険制度を世界で最初に整備した国であるオランダとします。これらの国々は国際長寿センターの国際比較研究調査チームが主な比較対象国としているところです。

 むろん、以下の数字でいい、悪いという価値の判断をすることはできません。それぞれの国にはそれぞれの文化的な背景があり高齢者の満足度、充実感を示しているわけではないからです。

 

日本と各国の高齢化率(%)

日本

ドイツ

フランス

イギリス

オランダ

2022

合計

29.0

22.1

21.1

18.9

20.1

男性    

25.9

18.9

18.9

25.9

18.9

女性

32.0

24.4

23.2

21.4

20.1

2010

合計

23.0

20.6

16.7

16.4

15.4

男性    

20.2

18.0

14.3

14.7

13.7

女性

25.7

23.2

18.9

18.0

17.2

(出典:OECD

 

日本では、高齢者の割合は人口の3割に近づいています。この表からは比較対象の国々でも高齢化は急速に進展していること、その中でも日本のスピードが2010年から2022年の間では最も早いこと、また各国ともに女性の高齢化率が高いことがわかります。女性が多いのは、のちに見ますが女性の方が寿命の長いことが影響しています。

ちなみに世界銀行によると、世界各国の高齢化率の平均は10%ほどで、OECDの平均は18%で偏りが見られます。また同じく世界銀行のデータでは日本はモナコに次いで世界第2位の高齢化率となっていますが、これは国単位であってもっと高齢化率の高い地域もあることでしょう。

 

高齢者労働参加率(%)

日本

ドイツ

フランス

イギリス

オランダ

                                                 2022                      (イギリスは2019)

合計

25.6

8.5

4.4

11.1

11.1

男性    

34.9

11.3

5.7

14.1

15.4

女性

18.4

6.2

3.4

8.5

7.1

2010

合計

19.8

4.0

1.8

8.7

6.0

男性    

28.7

5.7

2.6

11.7

9.5

女性

13.2

2.7

1.2

6.2

3.2

(出典:WHO

 

このような超高齢社会の中で、日本の高齢者はどのように社会とかかわっているのでしょうか?上の表の労働参加率は高齢者の中の被雇用者、自営業、求職中の人の割合です。

日本は際立って高いことがわかります。またここでも2010年から2022年にかけての伸びは非常に高くなっています。

この背景として、高齢者自身が長い生涯への準備を考えていること、少子化によって高齢者が労働市場に長くとどまることが望まれていること、また政府の定年延長施策などが考えられます。

 

60歳時健康寿命(年)

日本

ドイツ

フランス

イギリス

オランダ

    2021                   

合計

20.4

17.3

18.6

17.5

17.8

男性    

18.7

16.4

17.4

16.9

17.2

女性

21.9

18.3

19.8

18.2

18.4

(出典:WHO

 

また、高齢者の健康という面ではどうでしょうか?出生時平均寿命で見るよりも実際の高齢者の様子に近いと思われる60歳時健康寿命で見てみます。日本は最も長い年数となっています。つまりより長く健康な状態で生活をしているということです。

 この理由としては、健康的な食習慣や健康リテラシーの高さ、また家族、地域、職場を含めた社会の中でのコミュニケーションの在り方、さらに充実した医療や社会保障制度などが考えられます。

(上の表と同時期の男女計の出生時平均寿命では、日本73.4、ドイツ68.9、フランス70.1、イギリス68.6、オランダ70.0です。傾向は変わりません)

 

以上の諸表からみて、総じて日本の高齢者は超高齢社会の中で消極的な姿勢でいるわけではなく、勤勉であり健康にも留意して生活している様子がうかがえます。

 

参考(いずれも202491日閲覧):

OECD, Data Explorer, Historical population data

World Bank, Population ages 65 and above (% of total population)

WHO, Maternal, newborn, child and adolescent health and ageing

Labour force participation rate by older people (65+ years)

WHO, The Global Health Observatory, Global Health Estimates: Life expectancy and healthy life expectancy 

<written by S.O>

コメント

このブログの人気の投稿

推し活とプロダクティブ#1   『冷やかし」も立派なつながり

  人とつながりましよう! 地域活動に参加しましょう! 健康寿命が長くなるし、孤立してしまうことを予防できるし、大事だよね。   こんな言葉が、日本中の至るところで聴こえてきます。 確かに大事、そこに反論する人もいないはず。 でも、実際に、国や自治体、地域のリーダーが準備した場や活動に、出てくる人は多いといえません。   そんな地域に出てこない人を、孤立化している人と決めつけてしまいがちな福祉の専門職や地域のリーダーがいます。 果たしてそうなのでしょうか、本当に、誰とも接点をもたずに毎日をひとりで暮らしているのでしょうか?   私が週に一回、決まった曜日に顔を出すミニスーパーがあります。 そこに私が出かけていく理由は、必ず現れる気難しい雰囲気の 80 代くらいの男性が気になってたまらないから。   その男性、 3 回に一回はおつまみやお酒、バナナを買いますが、二回はなにも買わずに帰っていきます。 来て、ウロウロして、いつものパートのおばちゃんとバイトの大学生に話しかけ、満足気に出ていくのです。   「ここの唐揚げ硬いからな … 、年寄りのお客さん、来なくなるよ」 「大学生は勉強しなきゃ、俺みたいになっちゃうよ」 そんな言葉に、店員さんも慣れているのか、あいづちをうち、時にはアドバイスに感謝することも。   本心からの感謝ではないにしても、言われた本人は少し嬉しそう。 「まあ、昔、サービス業をしてたからさ、またくるからよ!」 と、足取りも軽く、何も買わずに去っていく、世間では孤立していると思われている男性。   そんなやり取りを、日本では『冷やかし』とも言うのですが。 毎回、感じるのは、「冷やかしも、この男性にとってプロダクティブなつながりなのだ … 」という新たな視点。   ここで大事なのは、誰にでも、どこででも『冷やかし』が成り立つわけではないこと。 その人にとって、馴染んだ、いつもの場や人であることが必須であり、相手も受け入れてくれることが大前提。   冷かしは、見守りや生きがいといわれるサポーティブな関係にはならないかもしれない。 でも、...

推し活とプロダクティブ#4           プロダクティブは「多様」

「施設に入っていた 90 歳の母、身体も弱ってきて、元気もなくなっていたのね。なにかしたいことあるって聞いたら、なんて答えたと思う?」 こんな問いをしてきたのは、生きがいづくりを応援する活動団体の代表でもあり、ご自身のお母様をサポートする C さん。   私の頭に浮かんだのは、「日本橋〇〇のうなぎが食べたい」と亡くなる数日前に呟いた祖父の姿。 C さんも同じだったようで、「大好物の ◾️◾️ が食べたい」なんて答えが返ってくると思っていらしたとのこと。   「でもね、違ったの。働きたいって、ポツリと呟いたの」 そんなお母様とのやり取りから、 C さんは、歳を重ねても可能な限り長くプロダクティブでいられる場づくりに取り組むようなったとのお話をうかがい、大いに頷いた私だったのですが … 。   ふと、思い出したのが、生きがいづくりの講座で講演した際に聴こえてきた受講者からの言葉。 「ねえ、イキイキしないとダメなの?そう言われると、なんだか辛い … 」と小さな声で私に呟いたのは 70 代後半の女性。   その瞬間に感じたのは、無意識に生きづらさを生み出してしまった自分の配慮のなさ。 プロダクティブや生きがいは、仕事して働き続けることやスーパーボランティアや地域のリーダーになることだけではないはずなのに … 。   その女性には、自分の楽しいことや好きなことを周りに少しシェアする位でよくて、イキイキの姿は人それぞれでよいことをご説明させて頂き、笑顔で帰っていただのだけれど … 。 それ以来、気をつけすぎる位に丁寧にお伝えしているのは、プロダクティブのあり方は多様で、そこに優劣はないということ。   今考えると、最期を迎える前の祖父も、鰻が食べたかったのではなく、多分、孫や子どもを自分の贔屓の店に連れて行って喜ばせたかったのかもしれない 大事な誰かに好きをシェアしたい、そんな祖父の想いが詰まった言葉が、「日本橋の〇〇のうなぎが食べたい」だったのかな … 。   今なら少しわかる、祖父の気持ち。 あの時に理解できていたら、もう少し違う会話ができたのかな … と、 30 年前を振り返る毎日です。     -...

イマドキシニアの日常生活#3     花もすえも輝け!

  2020 年に生活体制整備事業の一つとして創設された就労的活動支援コーディネーター。役割がある形での高齢者の社会参加を促進するために配置が可能になった職種である ※1 。これは、介護保険の理念である高齢者の『自立支援』を目指すうえで、既存の就労支援の仕組みだけでは活躍の場を見いだせない高齢者が多いという課題を解決するためのものと考えられている。 2022 年のデータ ※2 によると、関東信越厚生局管轄内 450 市町村のうち、すでに配置されている自治体はわずか 2.5 %であった。                                                          出典:防府市     毎朝、家の周りのあちこちにデイサービスのお迎えバスが停まる。つぎつぎとバスに乗り込むシニアたち。その中に、 2 軒隣向こうに住むご婦人、すえさん(仮称)がいる。 80 歳を超え、少し体力が落ち、歩行もバランスが悪く、バスの昇降に補助が必要な様子だ。大丈夫かなぁと遠目に見守りながら過ごしていた。    とある日曜日。玄関を出てみると、目の前の緑道に設置された水道から水をジャンジャン流し、バケツに水を張っている老婦人を発見。おやおや、すえさんではないか。足取りもしっかり、バケツを持つ手も力強く、嬉しそうに花たちに向かって何度も水をバシャバシャかけている。緑道の花たちにかける傍ら、ついでに自宅の植栽にもお水をバシャっとひとかけ、ふたかけ。  緑が陽の光を受けて水滴がキラキラ光る様子を満足気に眺めてゆったりと家の中に入っていった。  いつもとは別人かと思うような「日常を生きる」すえさんの姿がそこにあった。    今年の夏はいつまでも暑かったが、デイサービスがない日には、来る日も来る日も、雨さえ降っていなければ、すえさんは楽しそうに水遣りをしていた。緑道でも、すえさんの庭でも、花たちは暑さの中、元気に咲いていった。    そうしたある日、水道の前を通りかかると、一枚の張り紙が目に入った。「公共の水道につき、私的利用は...