「このチョコレートの新作スイーツ、有名なお菓子屋さんとのコラボなんだって」
と、少し高めのお菓子を二つ、嬉しそうにコンビニから買って帰った父。
「ふーん、胃の調子が悪いから(だからいらない)」
と、この一年は気持ちの落ち込みの波がくると無関心になるだけではなく、胃腸薬を飲み続ける認知症の母。
いつもは、たくさん入っている格安のどら焼きのお値下げ品なんかを買ってくるあんこ好きの父。
そんな父が母の喜ぶ顔を思い浮かべ、コンビニで高級チョコが挟んであるオシャレな、少し高いスイーツを買っている姿を思い浮かべて、胸が切なくなってしまったワタシ。
いつも行くコンビニなので、もしかしたら「今日は珍しく洋菓子なんですね〜」、「うちの奥さんにお土産なんです」、「お優しいですね〜」なんて会話があったのかもしれない。
そんなワクワク感と一緒に持ち帰ったスイーツなのに、母はつれない反応。
無関心になるのは認知症の症状だからしようがない、父もわかっているはずだけれど、わかっていても辛いはず。
小さなことだけれど、そんな小さな辛いことがジワリジワリと近くにいる人の心を蝕んでいくのかもしれない…。
そんな父の背中を眺めながら思い出すのが、「認知症になった家族を介護する自分、そうじゃなくいられる場もあるから生きられる」という男性介護者の言葉。
土いじりが大好きなその方は、週に一回の数時間だけ近所で畑を仲間と耕し、できた野菜をご近所にお裾分けして喜ばれているという。
多分、今の父に必要なのも、母を支える以外の自分でいられて、誰かから必要とされる場。
近すぎるとあえて伝えなくなる「ありがとう」や「あなたがいるから」をあえて声にだして伝えてもらえる場。
日本では介護する家族が想いを話せる場や、オレンジカフェのように認知症の本人も一緒に参加できる場も増えてきているけれど…。
多分、それだけでは辛くなってしまうのかな…。
これから意識して増やさないといけないのは、本人や家庭の事情を周囲はうっすらと知っているけれど、あえて介護の話なんかをしない、そんな場や関わりなのかな…。
新たに場やつながりを創り出すのではなく、父にとってのいつものコンビニのように、既にその人の日常にあるなにかがチカラになっていくのかな…、なんて、悩みつつ、母の代わりにスイーツをパクリ^_^
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東海大学健康学部健康マネジメント学科
ウェルビーイングカレッジ
澤岡詩野(SHINO
SAWAOKA)
jzt1864@tokai.ac.jp
健康学部公式サイト:https://www.tokai-kenko.ac/
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