スキップしてメイン コンテンツに移動

イマドキシニアの日常生活#13 Bucket List

 先日、母の旧い友人Mさんが訪ねてきた。

母は6年前に他界した旨を伝えたが、それでも構わないとのことだった。

 

母とMさんは20代の頃に3年間同じ障害児施設で先輩後輩として働き、同じタイミングで結婚が決まり、2人とも退職。Mさんは伊豆下田で蕎麦屋、母は川崎で駄菓子屋をそれぞれ営むこととなった。

その後、私も幼いころにMさん宅を家族皆で訪れたことがあるそうだが記憶にはない。

 

それから2人は年賀状のやりとりはしていたものの、お互いに忙しく毎日を過ごしているうちに、あっという間に半世紀あまりがたってしまった。

 

Mさんは昨年11月、ひざを痛めて手術をしたことをきっかけに、年齢を考えて店をたたむことを決心した。「最後の日は近所の方たちがみんな集まって惜しんでくれたの。続けてきて本当に良かった、地域に愛されていたんだなと思って嬉しかったわ。」

「それで、年が明けて、暖かくなってきたので、これからは懐かしい場所や旧い友人を訪ねる旅をしようと決めたの。80歳を超えたから、動けるうちにあちこち行って見ようと思って。」

―そういうことだったのか。

 

東京に住んでいる娘のところに夫婦で泊まり、タクシーの運転手をしている孫がMさん希望の場所へ連れて行ってくれる。その「行きたい場所リスト」の一番最初が母のところだったそうだ。

 




リビングに座ると、Mさんは働いていた当時の施設のバッチを取り出しながら、「私、あなたのお母さんには本当にお世話になったのよ。」そう言って私の知らない若いころの母の話をしてくれた。

お返しに私はアルバムを見せながら、Mさんの知らない母について、ひとしきり昔話をした。

 

「次はどちらに行かれるんですか?」私が尋ねると、「昔の職場に行って見ようと思って。もう建物も立て替えてるし、名称も代わっているみたいなんですけどね。」と言ってスマホ画面で今の施設の写真を見せてくれた。

 

おそらく、もうお会いしないであろう母の友人。

たった3年間一緒に働いただけなのに、最後の旅で「会いたいリスト」の一番に挙げてくれたMさん。

「お会いできてよかったわ。さようなら。」帰り際に挨拶をすると、ギュッと胸が締め付けられ、せつない気持ちになった。

<鹿嶌 真美子>


 

コメント

このブログの人気の投稿

Cutting-edge Daily Life of Elderly #10 Joining Hands to Exchange Energy

We can now enjoy longevity as we live in the 100-year-life era. People first worked to extend the average life expectancy, and then aimed for longer healthy life expectancy. I would say Japan has now entered the era aiming for longer “engage life expectancy.” What is engage life expectancy? It is the period in which a person can contribute to society and others. Going beyond healthy life expectancy, it refers to how long we can be useful to society throughout our lives.   “We are offering free hand massages today. You’re welcome to try it.” A receptionist told me when I visited a car dealership the other day. Lucky me! I instantly replied, “Yes, please!”   The massage space was set up in a corner of the showroom, with two massage therapists waiting for guests. The one on the right was a young, innocent-looking woman, carefully checking the cosmetic items she’d use for massaging. The one on the left was an older women, looking fully ready to serve and smiling at m...

< Series: What is “normal” in Japan, what is “normal” in other countries #1> Where do people want to spend their final days? Where do they actually spend their final days?

 From 2010 to 2011, the International Longevity Center Japan carried out an international comparative research project on end-of-life care. As part of this project, we conducted the International Comparative Study on Ideal Terminal Care and Death. In this study, we asked medical doctors, nurses, direct care workers, and social workers about what they thought was ideal terminal care and what would actually happen.   The International Comparative Study on Ideal Terminal Care and Death : English summary. https://www.ilcjapan.org/studyE/doc/End-of-life_Care.pdf List of research activities since 2010 (in English) https://www.ilcjapan.org/studyE/index.html   In this study, we presented these professionals in different countries with hypothetical cases, including Mrs. A with terminal cancer as shown below. We asked them where they thought would be the best place for Mrs. A to spend her final days. Additionally, we asked them where they thought she would actually ...

推し活とプロダクティブ#15 社会的処方とプロダクティブ

夏休み、いつもより 80 代の両親と過ごす時間の長い毎日。 慌ただしすぎて気づかなかったこと、一部分しか知らずに深刻さを理解していなかったことを突きつけられる毎日。   ため息ばかりではあるけれど、研究者としては、毎日を追いかけることで新たな発見もあったりする。 その一つが、母が不安定になるとはじまる二つの行動の実態が見えたこと。   母の不安や焦りのサインとも言えるのだけれど、一つ目の行動が、同じ家にいる夫に、ひどい日は 100 回以上も電話をかけ続けること。 留守電にしてる父のスマホには、実家や昔の住まいに「迎えに来てください」のメッセージがたくさん。   これが増えるときに連動しているのが、認知症外来への通院日と一番身近な家族である夫が外出したり zoom などで自分の知らない世界と楽しそうに話した後。 不安だよね … 、漠然とした事実を突きつけられるって、支えだと思っていた人が知らない世界にいるって … 。   もう一つの行動が、何時間も何回も、食器棚や冷蔵庫の整理をすること。 お皿の位置がしょっちゅう変わり、買ったばかりの新玉ねぎが丸ごと冷凍庫に入っていたり、ワタシもイライラしてしまうことも多々だったのだけれど … 。   夏休み、チラチラ観察をした結果、わかったのが、この引き金となるトリガーがあること。 それは、忘れちゃう、無くしちゃう、作りすぎちゃう母に先回りして家族が役割を奪ってしまうこと。   できないでしょ、座っててと部屋の片隅に押しやるのは一番やっちゃいけないこと。 わかってはいるけれど、やっぱり一緒にいる時間が多いほどに難しい … 。   そんな日常で驚くのは、冬の個展に向けて作品の準備をしたり、認知症になったご近所さんを心配をしている時はかっての母に戻ること。 発注済みの額縁屋さんに何度も電話したり、ご近所さんが既に亡くなっていることを忘れていたりというオチはあるのだけれど … 。   元気な時よりも、弱ってきた時ほどに、役割を持っていると感じられることって大事。 それを家族だってわかっちゃいるけれど、余裕もないし、ストレスで自分が助けてもらいたい位の状況だったりも...