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日本の高齢者と高齢社会#2                 超高齢社会日本の経済と財政

 

 国際長寿センターの国際比較調査研究事業で海外に出かけて現地の専門職や研究者の方々と話していると、「日本の消費税はどうなっているの?」とか「政府の借金はどうなっているの?」などと聞かれることがあります。

 各国ともに厳しい財源状況の中で高齢者支援を行っているので超高齢社会の先頭を走っている日本の日本経済や財政の状況を知りたいと思うのでしょう。

 そこで、簡単におさらいをしておきます。

 

日本のGDP

 日本の経済は思わしくない状況が続いています。端的な数字を挙げると、世界全体のGDPのうち日本のGDP1995年には17.6%を占めていましたが、2010年には8.6%、2022年には4.2%と低下しています(内閣府「国民経済計算」「選択する未来」)。デフレ基調が長く続き世界の成長から取り残されています。

 

 下の表は海外のいくつかの国と日本の一人当たり実質GDPの推移を1991年から2021年まで見たものです。日本の成長が非常に鈍いことがわかります。低成長の理由は、日本の生産年齢人口の減少、産業構造の硬直化、労働生産性や研究開発効率の低さなどがしばしば指摘されます。

              出典:内閣府「年次経済財政報告」

 

国家予算

 このような経済の現状の中で超高齢社会を迎えている日本では、この表にあるように国の財政の中で社会保障関連費の割合が高くなっていて、政府の債務が非常に大きくなっています。


*四捨五入により100%にならない場合がある

*「物価・賃上げ促進予備費」は原油価格・物価高騰対策などのための予備費

*歳出の「国債費」は国債償還費や利払い費

(出典)財務省「令和6年度予算政府案予算のポイント」

 

 国の予算の中で、社会保障関連費(年金、医療・保健、長期介護など)が大きなウエイトを占めて約1/3(33.5%) を占めています。

公的年金は賦課方式で25%が国の負担です。医療は健康保険で国民医療費の38%を国と地方自治体の公費で賄っていて61%は65歳以上のために使われています。ほとんどが高齢者対象の長期介護は介護保険で運営していて50%が国と地方自治体の公費で賄っています。

 年金は賦課方式ですので現役世代が中心になって支えており、健康保険では主に現役世代が加入している健康保険組合が高齢者の多い健康保険組合を支援しており、長期介護保険には40歳以上の国民も加入していますがほとんどは65歳以上のために使われています。こうしてみると世代間の対立が先鋭化しないだろうかと心配にもなります。

 

国の借金の関連を見ると、2024年度予算のうち国債償還費や利払い費である国債費は24%を占め、歳入のうち赤字国債は25.7%を占めています。これは政府債務が巨額となっており、恒常的に国の運営を国債に頼っているためです。

IMFの政府債務一覧によると、対GDP100%を超える債務のある国は以下の通りです(2022年)。

日本261.29%、ギリシャ177.43%、ベネズエラ157.81%、イタリア144.41%、アメリカ121.38%、ポルトガル116.05%、スペイン111.98%、フランス111.67%、カナダ106.59%、ベルギー105.27%、イギリス101.36%。

 日本の政府債務が飛びぬけていることがわかります。質問されたのでこの数字を現地調査の折にオランダの研究者に話したところ、とても驚いたようで「それで円がずいぶん安くなったのか!」という反応でした。為替相場の上昇下落のメカニズムはそれほど単純でもないように思いますが日本円の下落はよく知られているようです。

 

 財務省の資料によると、海外各国との比較で日本の対GDP社会保障支出は世界のうち第11位、社会保障以外の支出は31位、租税収入は29位とのことです。日本は税収が不足していて借金に頼っています。日本ではデフレの期間が続いてきたこともあり、また社会保険料の値上げがあるため租税の大きな改革はむつかしいのでしょう。

一例として日本では10%の消費税(付加価値税)についてOECDのデータでいくつかの国の例を見ると2022年度で、以下の通りです。

 ドイツ19%、フランス20%、イギリス20%、オランダ21%、デンマーク25..

 

たしかイギリスのケア専門職の方が対象だったかと思いますが、数年前に現地でインタビューをしていた時に日本の消費税率を聞かれたので答えたところ、一瞬会場が静まり返って、その後大爆笑が起こったことがありました。海外の方から見ると借金に頼るのは不思議に思えるようです。

 

高齢者の役割

 内閣府の「高齢社会白書」によると、2019年には日本の金融資産の63.5%は世帯主の年齢が60歳以上の世帯が占めています。このことを考えると、高齢者の金融資産によって日本の銀行は国債を購入しているわけですから、一見すると過去の日本の高度成長期の資産を回して国内でうまく資金が循環しているようにも見えます。

しかし、これはいったん豊かになってから超高齢社会を迎えたという特殊な日本のケースであり、またこのモデルが活力のある安定成長モデルであるとも考えられません。現役世代の大きな支援に頼っていることもあり、内向きの延命をしているように見えます。そして、経済の行方によっては国債の購入がいままでのようには行かない可能性もあり、政府予算の中の国債費が今程度の水準のままで続けられるかどうかもわかりません。

 こう考えると、前稿の「超高齢社会日本と高齢者の健康、就労」でも述べたように総じて日本の高齢者は超高齢社会の中で勤勉であり健康にも留意して生活しているのですが、さらに一層の活躍が望まれます。

これは高齢者がみなスーパー老人になるべきだといっているわけではありません。生産面では産業によっては高齢者が活躍する余地はまだまだ多いでしょうし、医療や介護ではサービス提供ありきではなく高齢者本人のウェルビーイングを中心に置く余地も多くあるでしょう。また、高齢者の地域社会への貢献はますます重要になっていくことでしょう。

(大上 真一)

 

(参考)

・内閣府「国民経済計算年次推計」2022、「選択する未来委員会報告解説・資料集」2015、「年次経済財政報告」2022、「高齢社会白書」2023

・財務省「予算政府案予算のポイント」2024

・厚生労働省「公的年金財政状況報告」2022、「国民医療費の概況」2022、介護保険部会(第110回)「給付と負担について」2023

International Monetary FundGlobal Debt Database2022 

・財務省「日本の財政を考える」

OECDConsumption Tax Trends2022

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