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3月, 2025の投稿を表示しています

推し活とプロダクティブ#8 おじさん達の「オシャベリ」とプロダクティブ

「うん、そうだよね〜、まあ、無理はしないで」 ひたすらにうなずき、最後はこのコトバで締められる電話。   電話をかけたのは父、相手はパートナーが数年前に倒れてから 1 人で頑張る 80 代に近い義兄弟。 悪くはなってもよくはならないであろうパートナーの介護について、素人のおじさん達が話し合っても解決策が出てくるわけもなく … 。   毎回、ひたすらに聴き、うなずき、いたわりすぎない程度に言葉をかけ続けてきた父から義兄弟への電話。 解決を求めない、同じことが繰り返される、そんなオシャベリが苦手だったはずのおじさん 2 人のやりとりを聴きながら考えさせられることも多々。   そもそも、プライドの高い企業戦士だったおじさんがオチの見出せないオシャベリを繰り返すこと自体が珍しいわけで。 多分、相手がご近所のサロンでも地域の傾聴ボランティアでもダメで、社会を引っ張ってきた大人として認め合った相手だからこそ成り立つオシャベリ。   ひとりで家族の介護を抱えんだり、 SOS を出すのが苦手なおじさん達にとって、オシャベリできる誰かは生命線。 とはいえ、父と義兄弟の様な関係性をみなが持っているわけではなく、余計なお世話だけれど、関係性ももたない人はどうしたものかが悩ましい … 。   加えて、このオシャベリ、実は認知症になったパートナーとの毎日に折り合いをつけられない父にとっても大事な時間だったりする。 今まで困りごとを抱える知り合いがいても、礼儀として距離を置きがちだった父だけど、当事者になってからはオシャベリに耳を傾ける意味を理解できるようになったわけで … 。   だから、義兄弟に電話をかけたり、時にはちょっと高価なお弁当を手土産に片道 2 時間かけて会いにいったり。 そんな父の娘として嬉しいのは、義兄妹とのオシャベリ後の表情に余裕がみえること。   多分、認知症になったパートナーの変化にあたふたする夫ではない、頼られる大人でいられるから。 感謝され、頼られるのは、ジブンを取り戻す時間にもなっているのかな … 。   などなど、オシャベリに耳を傾けつつ感じる毎日。 おじさん、いや、おじいちゃん達のオシ...

Cutting-edge Daily Life of Elderly #5 The Movie “104 Years Old, Tetsuyo Lives Alone”

 “The era of the 100-Year Life” is now becoming a common phrase, especially in Japan, but how many centenarians actually live in the country? The answer is 95,119 as of September 17, 2024*, more than a 620-fold increase in just over 60 years (153 centenarians in 1963). It means that Japanese centenarians can fill two major baseball stadiums.   The other day, I received an invitation to a movie preview. Drawn by the charming smile of the woman printed on the postcard, I decided to go see it. The movie “104 Years Old, Tetsuyo Lives Alone” is a documentary film about Ms. Tetsuyo Ishii. As some of you may know, she has been featured in newspapers and TV programs as a model centenarian; she has even published several books. It’s embarrassing to confess, but I knew nothing about her, so everything I saw in the movie was new to me.   Tetsuyo’s house is in a mountainous area surrounded by nature in Onomichi City, Hiroshima. The movie begins with Tetsuyo slowly walking backwar...

認知症の人の「くらし」を考える #1 希望のリレー国際フォーラムから

  2025年 2 月に東京で開催された「国内外の認知症の当事者がバトンをつなぐ 希望のリレー 国際フォーラム 2025 」で、 49 歳で若年性認知症と診断されたオーストラリアのケイト・スワファーさんの話を聞いた。 医師からは「これからは何もできなくなるので、仕事を辞めて将来に備えてください」と告げられた。しかし、スワファーさんは診断後、認知症当事者による権利擁護活動を開始し、認知症当事者として国連や WHO で講演を行い、博士課程で研究を続けている。 このように、認知症と診断されたときに「もう何もできない」と決めつけられ、社会とのつながりが断たれてしまうことを、「断絶処方( Prescribed Disengagement ) © 」と彼女は表現している。断絶処方によって、本人がもつ可能性が奪われないように、当たり前の「権利」の擁護に意識を向けたい。 また、彼女の話の中で、「リエイブルメント」が出てきた。 ILC チームで取り組んできた重要なテーマだ。リエイブルメントとは、本人のできることを活かし、対話の中でともに働きかけるアプローチである。従来の支援は「失われた能力を補う」ことに重点が置かれてきたが、リエイブルメントは「本人のこれまでの暮らしを大切に、できることを増やし、社会の中で役割を持つ」ことを目指している。 認知症の人が「支援を受ける側」ではなく、「社会の一員」としてつながり続けること、社会全体で「できることを活かし続ける支援」を広げていくことの大事さを再確認した大事な時間。 「希望を選べば、何だってできる( Once you choose hope, anything is possible )」という彼女の言葉に励まされ、どうすれば希望を選べる社会になるのか、自分ごととして、一歩一歩、考え続けたい。 ☆認知症介護情報ネットワークの HP で、「国内外の認知症の当事者がバトンをつなぐ 希望のリレー 国際フォーラム 2025  ~認知症当事者の声とチカラ、つながりを活かして、共生社会の推進を~」に関する資料・動画が下記に掲載されている。関心を寄せて頂いた方はぜひチェックいただきたい。 https://suishinin.jp/suishinin/suishinin_event/event_No6-2.php ...