「もうさ、この子たちがいるから死ねないんだよ~、俺さ~」と、日に焼けた顔をくしゃくしゃにして嬉しそうに笑うのは70代まんなか位の男子。
この男性に最初に遭遇したのは、桜舞い散る4月の団地。
高齢化が進み、ヒトの姿もまばらな団地でいつ通っても自宅前の庭でなにかをしている男性が気になって、気になって、気になって…
もっと気になったのが、50㎝位の水槽がたくさんあり、その周りを赤い液体の入ったペットボトルで囲んでいること。
おまけに、この自宅前の空間を埋め尽くすくらいなにかがあるのは、男性宅の前だけで、とにかく目立つ。
この謎がとけたのは5月の団地シニア女子が集まるサークル活動でのこと。
なんとなしに話題にだしてみたら、「あっ、メダカの学校の校長ね」と、口々に教えてくださるシニア女子たち。
よ~くうかがってみると、退職したのをきっかけに数年前からメダカを育てはじめ、どんどん増えていった結果が今の姿。
200匹を一人でお世話しているらしい、水槽の近くで紫蘇も育てていて、知っている人にはくれているらしい…などなど。
ここまでわかったら突撃するのみ、ということで、さっそく校長先生に声をかけてみることに。
遠目にはちょっと気難しそうに見えたシニア男性だったのだけれど、いやいや、チャーミングでお喋りも大好き。
「童謡のめだかのがっこうになぞらえて、ご近所からはメダカの学校の校長先生と呼ばれていますよ」
なんてお伝えすると、恥ずかしそうに上を向く姿もステキ。
餌のみじんこから育て、何種類ものメダカを増やし続けているくらいなので昔からメダカが好きなのかといえば、そうではないとのこと。
やることがなくてたまたま育て始めたら、どんどん増え、あげる先がないから、メダカ屋さんにわけているとか…。
お話のなかで気になったのが、「子どもたちとかさ、欲しい人にあげられるのが一番なんだけどさ…」という言葉。
思わず、近くの保育園なんかにプレゼントしたり、メダカの飼い方教室をやったら喜びますよね~なんて、余計なことを呟いてしまったのだけれど…。
黙って首をふる校長先生から聴こえてくるのは「求めているのはそんなんじゃない、ほうっておいてくれ」という無言のサイン。
朝に夕にメダカを世話しながら過ごす日常、たまに誰かとメダカトークができればよく、大っぴらに褒められたり、地域の有名人になりたいわけではないのである。
ということで、思いついたのが、メダカだけ褒められ、メダカを有名人にする計画。
といっても、関わっている団地のイベントでメダカの水槽をおき、生き物を飼うことが難しくなっている高齢の住民さんにみていただく、ただそれだけなのだけど…
「いいわね~、かわいいわね~」、「昔は飼っていたの、子どもが育てたいって、懐かしいわね~」
水槽の前で口々に話す人々の表情はどこか優し気で、こちらまで優しい気持ちに。
公には団地の前庭を占有してはいけなかったり、校長先生の希望もあって、誰のメダカなのかは伏せていたのだけれど、なんとなしにわかった人も少なくないはず。
イベント終了後にメダカを返しにうかがいつつ、メダカが大人気だった話をお伝えしたら、かなり嬉しそう。
「前の道をさ、通る人がありがとうって、もう、困っちゃうね」と、またまた嬉しそう。
結局、団地で有名人になったメダカたちは、うちの子どもの希望で、校長先生オリジナルの水をきれいに保つ赤い液体とともに我が家に引っ越してきだのだけれど…
そうね、校長先生が求めるのはこれくらいのプロダクティブなのよね。
好きを誰かにわける、校長先生と生徒のメダカたちに教えていただいた夏休み^_^
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東海大学健康学部健康マネジメント学科
ウェルビーイングカレッジ
澤岡詩野(SHINO SAWAOKA)
jzt1864@tokai.ac.jp
健康学部公式サイト:https://www.tokai-kenko.ac/
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